幸せになりたい
いつも思っていた。
どこに行けば、何をすれば、誰に会えば、
幸せになれるのかと。
色んなところに行き、色んなことをして、色んな人に会った。
けれども、すこしも幸せになんてなれなかった。
ひょっとして幸せなどというものは、この世界に存在しないのじゃないか。
幸せというものが、きれいな箱に入っていて、
誰かが「さあどうぞ、これが幸せです」と言って、
差し出してくれるとでも思っていたのだろうか。
たぶん…思っていた。
いつかきっと、誰かが幸せをくれるのだと思っていた。
そのくせ自分が人に幸せをあげるなんてこと、露ほども考えていなかった。
自分があげないものを、人からだけもらおうなんて、
自分勝手もいいところ。
あるとき、自分があげられるものをあげてみた。
「笑顔」
そうしたら、あげた人が嬉しそうに微笑んだ。
嬉しそうに微笑んだ人を見たら、ちょっと幸せな気持ちになった。
幸せな気持ち?
何度も声に出さずにそうつぶやいた。
そのあと、もういちどつぶやいた。
ひょっとしたら…そういうことなのかもしれない…と。
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